週刊「÷3」

TEXT by Maki Takemoto

竹本真紀 profile
1976
青森県八戸市に看護婦の母とバンドマンの父の間に生まれる。

1992
中学校卒業記念イラスト展 (八戸NHK)文化センター

1994
バンド「根城パラダイス」(八戸西高等学校体育館で一度限りのライブ)

1999
国立弘前大学教育学部小学校教員養成課程卒業
美術科卒業制作展(弘前大学学生会館、弘前VIVRE)

2000
ひいらぎ展 (柏高島屋ステーションモール市民ギャラリー)
美学校トンチキアートスクール入校 千葉県柏市在中


 「価値観はその人の生まれた環境から形成される。」という話を聞いて、改めて柏の某おこのみやき屋で妹と育った環境について話す。何かにつけて家の話になると暗くなっていたここ近年だが、自分の価値観が形成された環境について考えると他の人たちよりも恵まれた環境にあるのではないかということになった。
 まず、わたしは親に「勉強しろ。」とうるさく言われたことがない。夜遅くまで勉強しているものなら「早く寝なさい。」といわれた。健康第一なのだ。しかし、母も祖母も看護婦だったため、「おなかが痛いから学校行けない。」という仮病は全く通用しなかった。
 妹や弟は生まれてまもなく保育所に預けられたが、わたしは4歳くらいから保育所に預けられた。家にいる時間がわりと多かったのか、祖母が自分なりの教材を作ってわたしに与えていた。わたしはその教材が大好きで、言葉や数字をどんどん覚えていった。
 わたしの最初の記憶といったら、暗がりのバーのカウンターにわたしが座り、蝶ネクタイのバーテンダーにオレンジジュースを出してもらい、黒ひげ一発ゲームをしているという光景だ。あとで母に聞いたら、父親が演奏者で勤めていたダンスホールだという。わたしは生まれてからというものわたしが生まれてからきいたはずがない音楽や、父親が演奏していた音楽をもう一度聴きたいのだといって親を驚かせたことがある。家でレコードで聴いたのだと思っていても実際家にレコードがないのである。恐らく母親の体内で生バンドで聴いていたのだろう。ビートルズや、アニマルズ、ローリングストーンズなど、なぜか聴くと涙がでるほど懐かしく感じるものがある。
 この環境を大学の担当教官の岩井先生はうらやましがった。実はわたしが離れていた美術にひき戻されたのも音楽がきっかけだった。教養学科で何気なくとった「美術の世界」で岩井先生は「ウッドストック」のジャニスジョプリンとローリングストーンズ、ジミヘンドリックスの映像を流した。そして三島由紀夫と安田講堂事件。「これが美術だ!」と言われてカルチャーショックを受けた。父親に電話して「すごい授業があった。やはり美術をやりたいのだ。」と言った。
 中学のとき、友達に貸してもらった惣領冬美の「3THREE」というマンガに影響されて、出てきたアーティストの名前をすべて連ねた。「ミニーリパートン、ジャニスジョプリン、ディープパープル、ローリングストーンズ、レッドツェッペリン」など。すると、家にほとんどのレコードがあった。父はそれに加えてCCRとグランドファンクレイルロード、カーペンターズをダビングしてくれた。
 また岩井先生からおもしろい課題が出た。養護学校の生徒に向けた美術教材である。「目の見えない人に色を音で表現しろ。」と。わたしは確か、「赤」とか、「青」とかにしなかったと思う。その日の気分によって見える色も違う。という風にしたのだと思う。恥ずかしげもなく、「今日は彼氏に会ったので、こんな色です!」みたいな。真剣に作って何気なく提出したのだが、評価が良くて大講堂でみんなの前で流されてしまって赤面した。だが、その中に「感情的になっているときの色。」というのが入っていて、偶然救急車の音が入って、そのまま使ったものがあった。すると、先生は偶然入り込んだ音をクリアにせずにそのまま使った!と妙につぼに入って、「アラーキーと同じ感覚だ!」なんて言っていた。当時アラーキーというと、ヘアヌード撮ってる変なおっさんとしか思っていなかったので、父に、「こんなこと言われたけど、、、。」と話すと「最高の褒め言葉じゃん!」と言われた。
 その2年後青森市内でアラーキーとすれ違い、ただのエロじじいではないという気を感じ、さんざん村上善男氏の授業で習った「土俗。」と研修旅行の岩手県遠野市での講義の後で偶然目にした出版停止になった藤田ともこのヌード写真集「遠野物語」は本当に芸術だった。さらにその4年後アラーキーの写真を千枚貼るという仕事をして、またその時も勘違いして「ヘアヌード千枚かよ!」と言っていたが、花と空の写真だった。大変な作業の後に「ごくろうさん!体で払うから!」のひとこと。やはりエロじじいか、、、?環境が良かったかもしれないというのは、周りの人間がわたしの才能に惚れていたという点もある。「天才!」「絵がうまい!」「美人!」と小さい頃から言われて調子に乗って生きて来た結果がこれだ。中には「暗い!」「凶暴!」「わがまま!」というのもあったが。
 音楽の後印刷会社に勤めた父のおかげで、家には紙がたくさんあり、絵をかくことには困らなかった。竹本家そのものが独自の価値観を持って頑固に生きていたように思う。その中で時にはバランスを崩したり、だらしなくなったり様々なことが重なって歯車が合わなくなってしまったこともあるが、わたしがやりたいことをさせてもらっていることにはかわりはなく、そのことに関しては家族の皆様には本当に感謝している。
 しかし、青森というところは田舎ではあるが、棟方志功にしろ、寺山修司にしろ、太宰治にしろ、地元出身者にはすごく興味を持つところがあり、一般的にもわりと文化の高い情報がながれているところがある。だから、東京よりも見る目が厳しいかもしれないし、突然適確なことを言われてドキッとすることがある。環境が良かったというのは今だから言える話。もっと上に行くためには現在のcomfortablezoneに身を置いたままではいけない。

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@横浜Bank ARTでの展覧会 「Reading Room」
2005年2月18日(金)〜3月15日(火)
11時半〜19時(会期中無休)
Bank ART studio NYK  
  前売り 600円 当日 800円 (併催展「食と現代美術」「Evolution Cafe」と共通チケット)
出品作家 
大久保亜夜子 川崎昌平 酒井翠 竹本真紀 東野哲史 Book Pick Orchestra

@3月9日サンキューアートの日!
開発プロデュースの「アンデパンダン展@RICE+」
を開催します。
日時:3月9日(水)午後6時から〜
   3月13日(日)午後6時からオークション
RICE+
東京都墨田区京島1−18−8

@個展
ギャラリー小野 京橋 (小野画廊の新スペースです。藍画廊の通り)
104ー0031
東京都中央区京橋3ー5ー4森ビル1F
2005年3月14日〜3月19日
11:30~19:00(最終日16:00まで)

@東京青山のGallery ART SPACEでおもしろい4人展します。
「TALKING BODY」
2005年4月5日(火)〜10日(日)
12:00〜19:00(日曜〜17:00)
相原康宏、竹本真紀、徳永修子、ぶりお

@個展
2005年4月13日(水)〜4月18日(月)
11:00〜20:00
Studio Zone (高円寺)
@個展 6月頃東川口のKEN Art Gallery


青森県五戸のおみそ。


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