週刊「÷3」

TEXT by Maki Takemoto

竹本真紀 profile
1976
青森県八戸市に看護婦の母とバンドマンの父の間に生まれる。

1992
中学校卒業記念イラスト展 (八戸NHK)文化センター

1994
バンド「根城パラダイス」(八戸西高等学校体育館で一度限りのライブ)

1999
国立弘前大学教育学部小学校教員養成課程卒業
美術科卒業制作展(弘前大学学生会館、弘前VIVRE)

2000
ひいらぎ展 (柏高島屋ステーションモール市民ギャラリー)
美学校トンチキアートスクール入校 千葉県柏市在中


 「5月になったら会おうね。」とメールした友人からは返事が返ってこなかった。忙しいんだろうなと思ってそんなには気にとめなかった。自分のホームページを作ろうと思って、彼女のホームページとリンクするように設定した。彼女のホームページは閉鎖されていた。URLが変わったのだと思い、特に気にはとめなかった。
 彼女はすでにこの世にいなかった。
 それを知ったのは彼女が亡くなってから1か月してからだった。「4月19日に自殺したと、ネットで検索したらでてきた。」と、友人が教えてくれた。他の友達にきいても、亡くなったことを知る人はいなく、やはりネットの情報しかなかった。
 2月、彼女と渋谷で待ち合わせした。5時間待ったが来なかった。その頃に教えてもらっていた電話に電話した。同居人がいるはずだった。留守だったので留守電にメッセージを残した。でも一日に何回も電話した。
 19時過ぎにやっと人が出た。初めて話す同居人だが、彼はわたしの名を知っていた。よくわたしの話をしていたのだと。わたしはそこで、彼女が亡くなったということを認めざるを得なくなった。
 友達にも連絡した。わけがわからないのと、ムカつきで、ぼ〜っとした。ただ、静かな時間が流れていった。
 彼女と初めて会ったのは確か中学二年生のコミケで。わたしはマンガ家になろうとしていたので、同人誌をかいたり、イラスト展をしたりしていた。彼女はいわゆるコスプレをしていたのだが、初めて日本人で宇宙に行った秋山さんのコスプレと称して、モスクワの人がかぶる帽子みたいなのをかぶっていた。おもしろい人だな〜と思ってみていたが、ある日その人がうちの中学校に転校してきた。それから友達になって、高校も一緒の高校へ行った。一緒にマンガを書いたり、音楽をきいたりバンドをやったりして、いつもばかなことばかりしていた。八戸のような田舎でも彼女はとても良いセンスをしていて、ファンも多かった。わたしは絵はうまかったが、おしゃれなセンスは全くなくて、彼女がいるからマンガ家になるのをやめたようなものだ。
 そのうちわたしは、絵をかくことは日常的なことだったので、かいてはいたが、バレーボール馬鹿になってほとんど同人誌などの世界からは遠ざかってしまった。
 その後、わたしは弘前大学に入学し、彼女は八戸に残った。それからもコンタクトはとっていて、当時桜井よしこさんが弘前に講演会に来るというので、弘前に遊びにきたこともあった。
 そして彼女は東京へ行った。わたしは彼女がプロの漫画家を目指していたことは知らなかった。それから遅れてわたしが上京した。住む場所を決めるときも一緒に探してくれた。わたしがだらしないときは本気で怒ってくれた。
 おもしろくて、明るくて強くたくましい彼女だったが、人一倍繊細だった。わたしは彼女を天才だと思ったし、彼女もわたしを天才だと思ってくれていた。いつも刺激しあい、励まし合って、いつも本気でぶつかっていた。
 彼女と浅草に遊びに行ったとき、彼女は初めて弱いところをみせた。その頃から彼女はどんどん弱っていったように思う。でも彼女はかくしかなかった。そして彼女は漫画家になった。
 何度も自殺未遂をして、でも彼女から何かしら発信があり、話をきいてた。でも今回は発信がなかった。
 わたしは何も知らずに1か月過ごした。彼女がいたから頑張ってきたし、彼女と一緒に大きくなっていけると思っていた。
 でも、死んじゃったらしょうがないじゃないか。
 同居人は彼女が望んでしたことだから周りで悲しむのも申しわけない。というようなことを言っていた。冗談じゃない。わたしが間違った方向に行きそうになったら本気で怒った彼女。わたしは今彼女のむなぐらつかんで殴りたいくらいだ。
 彼女がずっとつらかったのはわかってる。でも、本当にこれからだった。悔しいよ。歴史に残るもの残してからだったら死んでいいよって言ったのに。
 最後に、わたしが彼女を天才だと思った大好きな文章を抜粋します。
 彼女は時が流れて、人やものが変わっていくことをいつもせつなく思っていたように感じています。

「触れることを 許さなかった夏 無言で 森の繁みを 抜ける様に去った夏も 風がすこしすずしくなって 触れることも 自然だったかもしれない秋 今度は人の繁みを くぐる様に歩いた秋も 果たして私は 忘れてしまうのかもしれない 1995 凪裕矢」

「ちょっといっぱいいっぱいです」展と「出立/欠隙presentup/breakvacant」展

「ひみつギャラリー」と芸大の学生会館との交換展覧会です。題して「アートノーマライゼーション」

「ちょっといっぱいいっぱいです」展
場所:東京芸術大学学生会館展示室
日時:05.5.24(火)〜5.27(金)10:00〜19:00
24日13:00〜
27日〜17:00
井戸敏之(美学校卒)
クロダマサユキ(明星大学卒)
竹本真紀(美学校卒)
田島孝通(イメージフォーラム卒)
冨安由真(無所属)
27日はパフォーマンスあり
13:00〜クロダマサユキパフォーマンス「超時空だるまさんがころんだ」
16:00〜設楽玲子ワークショップ「漫画を音読してみよう」

「出立/欠隙presentup/breakvacant」
場所:ひみつギャラリー日時:05.5.17(火)〜6.11(土)
岡本育子(東京芸術大学美術学部油画科在籍)
黒野祐一郎(東京芸術大学美術学部壁画科卒)
設楽玲子(東京芸術大学美術学部先端芸術表現科在籍)
(ひみつギャラリーの場所はひみつです。ご来場の方は、himitu-g@jcom.home.ne.jpまでご連絡ください。)
〔ちょっといっぱいいっぱいです展の様子を芸大での展示が終了後、6.11までひみつギャラリーにて同時に特別展示いたします。〕

@東京都西荻窪のニヒル牛で、記憶処理研究所、クライアントの未処理記憶サンプルを100円で販売中!
その他、カンバッチ、ポストカードも販売中です!

@個展
 2005年6月7日(火)〜12日(日)
東川口のKENArtGallery
 展示即売会という形になります。旧作、額装作品あります。

個展
2005年6月30日(木)〜7月26日(火)
 リーバイスのショップでの展示です。


旧作です。

 

 N-mark.com
 Copyright 2000.N-mark.com,All rights reserved.