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幸村真佐男展/LIFE LOGー行雲流水ー





『star kennedy』CTG 1968 IDEA :Masao Komura/PROGRAM:Haruki Tsuchiya 


『四字熟語集 一言無限篇』


『四字熟語集 行雲流水篇』(部分) 3.『四字熟語集 一言無限篇』

アートとコンピュータが初めて出会ったのはいつであろうか。現在ではメディア・アートやコンピュータ・アートといったカテゴライズが意味を持たないほどに、ツールとしてコンピュータを用いることが特別なことではなくなったが、その黎明期に幸村真佐男は最先端にいた。1960年代、日本ではコンピュータが大型計算機と呼ばれていた時代。幸村は多摩美術大学在学中、槌屋治紀らと日本で初めてのコンピュータ・アート・グループCTG(コンピュータ・テクニック・グループ)を結成、その短い活動期間(1969年解散)に数多くのコンピュータグラフィックの作品を発表した。星形で生成されたJ.Fケネディーの肖像や女性のシルエットが正方形へ変形していく様など、コンピュータで制御されたドローイングマシーンによって自動描画されたイメージは、当時のアートシーンで国際的にも大きな注目を浴びた。
1980年代以降になると、幸村のコンピュータの応用はグラフィカルなものから、コンセプチャルなものへと変容する。その代表的な作品が「非語辞典」である。この作品はコンピュータのプログラムにより漢字やアルファベットをランダムに組み合わせるもので、例えば、「a」10個の文字列で始まる「非語辞典アルファベット編(10文字)」は「aaaaaaaaaa」「aaaaaaaaab」「aaaaaaaaac」と続いて行く。一見無限に思えるが実際的には有限であり、その文字列のほとんどは「非語」であるが熟読する中で偶然的に意味を持つ言葉に出会うかもしれない。
このようにコンピュータによってこの世に存在する全ての文字の組み合わせをリストアップする。このコンピュータに代行させた、徒労とも言える作業によって生まれた分厚い辞典を前にすると、人間には体感することのできない途方も無い時間軸を見ることができる。それは、人間の不可能性を打破するもので、その発想力の可能性と限界を探求するものである。
今回のN-MARK B1では「行雲流水」という四字熟語で非語辞典を制作する。「雲」と「水」の文字を固定し、あらゆる文字の組み合わせをリストアップする。そしてもうひとつ、新作として発表されるのが「LIFE LOG」である。幸村がこれまでに日常的に撮り溜めてきた300万枚に及ぶ写真。その全ての写真を秒30コマのフレームに落とし込み、約27時間30分間の映像化を目指すというものである。彼がカメラを持ち始めたころから撮り続けている「散歩写真」は日曜写真家の「散歩写真」であるからこそ、リアルな彼の日常のカット・アップである。約27時間30分に圧縮された、一瞬一瞬の連続は彼が見てきた物のアーカイブであり、その映像は彼が一生の第四コーナーで見る走馬灯のようなものかもしれない。今年70歳を迎え、達観した仙人のような風貌の幸村がタイトルとした「行雲流水」とは、空を行く雲や、川を流れる水のように、留まることをせず、常に変化し続けることを意味している。
それはまさに、コンピュータを制御し、永遠とも思える宇宙的スケールに挑み続けた幸村の制作スタンスそのものである。


幸村真佐男略歴
1943年生まれ、1969年 多摩美術大学プロダクト・デザイン科卒業。1967「サイバネティック・セレンディピティ」展(ICA、ロンドン)「コンピュータ・アート展“電子によるメディア変換”」(東京画廊、東京)1969「現代美術の動向」展(京都国立近代美術館、京都)「国際サイテック・アート展-エレクトロマジカ'69」(ソニービル、東京)第6回パリ青年ビエンナーレ(パリ近代美術館、フランス)1983年以降 「非語辞典」制作。1995 「トランスカルチャー」展(第46回ヴェネチア・ビエンナーレ、イタリア/ベネッセハウスアートミュージアム、香川)1998「バベルの 図書館」展(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京)2003「Media Art A to Z」展(国際デザインセンター、愛知)2005「アート&テクノロジーの過去と未来」展(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京 )2006「円相/デジタル」展(中京大学Cスクエア、愛知)「20世紀コンピュータアートの軌跡と展望」展(多摩美術大学美術館、東京)2007「文化庁メディア芸術祭10周年企画 日本の表現力」展(新国立美術館、東京) 現在、中京大学情報科学部メディア科学科教授。

幸村真佐男HP
http://www.st.chukyo-u.ac.jp/z177113/index.html


 
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2013年8月2日(金)ー8月31日(土)│13:00ー19:00│日・月曜定休│入場無料
〒460-0003名古屋市中区錦2-11-13 chojamachi TRANSIT BUILDING-B1
主催:N-mark│協力:chojamachi TRANSIT BUILDING│企画協力:rhythm.war*p 名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー「clas」

展覧会関連企画

オープニング・パーティー
8月2日(金) 19:00ー
N-MARK B1(地下1階ギャラリー)
【参加費】無料

幸村真佐男誕生日パーティー

8月9日(金) 20:30ー
N-MARK B1(地下1階ギャラリー)
【参加費】3,000円(予定)

アーティストトーク
8月23日(金)19:00ー
N-MARK B1(地下1階ギャラリー)【参加費】無料


大幸村展プロジェクトとは
幸村真佐男はコンピュータを媒介としたアート作品を半世紀に渡り発表し続けている。70歳を迎える現在においても常にシーンの最先端を走り続けている幸村の「今」を3会場(N-MARK B1、rhythm.war*p、clas)をリレーする3つの異なる個展で垣間見るものである。

#01 幸村真佐男展│LIFE LOGー行雲流水ー
8月2日(金)~8月30日(土)
会場|N-MARK B1 URL|www.N-mark.com

#02 プラトンの洞窟をぶら下げて 〜ピンホールカメラとその写真郡〜
9月1日(日)~9月30日(月)
会場|rhythm.war*p URL|rhythmwarp.blogspot.com

《予定》
#03 幸村真佐男―People Gazing
10月1日(火) 〜 10月13日(日)
会場|名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー「clas」
URL|www.vision.ss.is.nagoya-u.ac.jp/clas/
※詳細については、各会場のwebサイトをご確認ください。