大嶽涼太|Butterflies
Ohtake Ryota Solo Exhibition
2023.10.14(SAT)-10.29(SUN)
13:00ー20:00(日曜日は18:00まで) | 定休日 月・火・水曜日 |入場無料
会場|N-MARK B1 主催|N-mark
N-markが芸大、美大の卒業制作展をリサーチするプロジェクト「BLACK TICKET」。2022年の名古屋芸術大学の会場で大嶽は3つのスタイルの作品を展示していた。謎めいたペインティング、日記を病的に書き連ねたドローイング、そして最も興味を惹いたのは実物の紙幣を支持体とした本展タイトルでもある「Butterflies」のシリーズである。蝶や蛾の形にカットされたそれらがもつ眼状紋からは、人間の深い心の闇にフォーカスする大嶽の眼差しを感じます。本展は標本と化した人間の愛と欲望を象徴する「金」で構成されます。紙幣の汚損というタブーを恐れない、アーティストにもオーディエンスにも覚悟が必要な展示になるでしょう。心の闇に触れるわけですから。
N-mark
「金」は、絶えず人々を魅了するかのような"蝶"であり、一方で破滅へと導く"蛾"のような存在でもある。
私は非常にか弱い人間であり、日々の労働や、些細な失恋、他人の目線の微力な変化ですら、時折激しい苦悶を引き起こしてしまう。そんなありふれた日常の出来事が、私の心に大きな傷跡を刻んでいき、時にその憤怒から逃れんと、非現実的な安息を求めて、深夜ひとりでに闇の中へと身を投じる事があるのだ。
その暗黒の先に姿を現すのは、夜の華やかな繁華街。ここでは絶えず、酒に溺れる男たちや、虚ろな瞳をした女性、必死に声ならぬ声を上げる人々が、ひたすら何かを追い求める様に、貪欲な獣のごとく彷徨っている。無機質なコンクリートの木々には、風俗店やキャバクラの妖艶なネオンが不気味な花を咲かせ、酒場からは虚無の叫びが響きわたり、明かりの差す扉先では、人々の目を掴んで止まない銀色の玉が水のように湧き出していた。
そんな退廃的な情景で満ち溢れるこの街は、ある種薄汚い人間の欲望に深々と根ざした、巨大な資本が織り成すジャングルと言えるだろう。
夢うつつな誘惑に魔が刺したその時、私は何とも言えない不気味な気配を感じて、ぐるりと辺りを見渡してみる。
すると、美しき羽を持つ謎の「蟲達」が、辺りに生い茂った建造物にびっしりと絡み付く様にして、ひらひらと夜空を飛び回る、世にも奇妙な光景を目にしたのである。
ふと、枯葉が落ちる地面に佇んでいた1匹に目をやって見ると、繊細な模様にはどこか見覚えがあり、普段何気なく手元からうっすらと浮かび上がる、自分の目を釘付けにして止まないソレであった。
恐らくだがその異形な存在達は、常にこの街の物陰から我々を見張り、どこか蠱惑的な眼差しを送ることで、資本の根に心身が蝕まれた者を絶えず翻弄し、終わりなき欲望の渦中へといざなっていたのかもしれない。
以降、私は彼らを「Butterflies」と名付けたのだった。
この度、私は2020年から2023年にかけて、様々な街で密かに採取してきた「Butterflies」達を、伏見という歓楽街の隠然たる地下に、ひっそりと佇むN-MARK B1にて展示させて頂きます。
資本主義の暗闇から生まれた異形の眼が、一体我々に何を物語っているのか。その答えをどうかご自身の瞳で確かめてみては如何でしょうか。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。
大嶽涼太
information
N-MARK B1
〒 460-0003名古屋市中区錦2-11-13
chojamachi TRANSIT BUILDING-B1