「ゴシップ好きの彼女の話」(永遠に仮タイトル)原田真千子松原妙子の作品は、それとの無関係を装いながら、恋愛について語ってきました。
芯を外しエッヂを削って握りつぶされた彩々のビニールテープ、粘着性たっぷりの歪んだ楕円。それをごろごろと調理用のトレイに積み上げて冷凍庫に入れたり、白色の立方体ですっぽりと顔を覆い頭部だけで動いて行ったり、展覧会中に自動車教習所に通い続け、教習所の案内パンフレットだけを残して不在のスタジオを見せたり... 。最近では、この夏N-MARKが主催したPORTPEOPLEにおいて、港の倉庫に一列に並べられた7台のスクーターに「この夏なにもなかったあなたへ。7人の恋人差し上げます。」とビラを貼って、ウクレレを弾きながら、名乗り出る人を待っていました。
恋愛という最もポピュラーでオーソドックスなテーマを、ドラマチックで露骨な方法で扱うことを避け、意表をついた方向から微妙な距離感をもって表し、何だか煙に巻かれたような気持ちを残していきます。不格好で笑いを誘うような動きで、巧みにカムフラージュした愛の告白は、確信犯の仕業にちがいないのです。
少しとぼけた不思議な愛敬を持つオブジェやインスタレーションも、それ自体が十分に異彩を放っていて魅力的ですが、あえてその背後に見え隠れする彼女の行為、パフォーマンスに注目したいアーティストです。
今回の展覧会では、N-MARKのギャラリーに“午後のひととき”が提供されます。
卵掛けご飯が食べられる食卓も用意されるインスタレーションについてのアーティストからのコメントを添えて、展覧会のお知らせとさせていただきます。
松原:よく、あした、あさって、と使いますが三重県や、愛知の方では、その次にくる三日目のことを「ささって」というふうに使います。あんまり知られてないと思うけどね。
今回の展示は、あしたのことでもなく、一年後や、ある程度想像してどうしても妄想や、空想や予想にストップがかかってしまうほど遠い未来のことでもなく、間の抜けたあんまり聞き慣れん「ささって」くらいの距離を思いたいと思います。ぼーっとできる感じ。でも、安堵感はそうない感じ。
原田真千子