artist file '99
exhibitions'99 at JINRYO
「ハリガネに訊け!」 −Abvery発ダウジングの旅−
中野良寿個展 1999年11月12日(金)〜11月21日(日)
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中野良寿は、人と人、人と物、物から人へと様々な関係性の中のコミュニケーションを新たに創造してゆくこと、あるいは意識化してゆくことのできる場やプロジェクトをつくりあげることを作品にしているアーティストです。
プロジェクトは、中野が出会ったり発見した小さな出来事を起点に始まります。それは、ある人物の姿だったり、小さな棒切れだったり、あるいは買い物の途中にかわした会話であったり、とても個人的でマスメディアや歴史の網の目に掛かることなど決してないような些細なエピソードです。中野が投げかける、こうした一見みすごしてしまうような些細な驚きや発見は、多くの人の中を通過することによって、様々な形を与えられ変化し、いずれ形を失ってゆくことになるでしょう。しかし、中野はその過程において生れてくる予期せぬ状況や新しいエピソード、ユーモアやウィット、いつもとは違う視点を通して、私達の生の、その硬直した部分やともすれば無感動になりがちな日常をより生き生きとするよう働きかけることができると考えているのです。
今回N-MARKで行われる、「ハリガネに訊け!」−Abvery発ダウジングの旅−は、中野が4年前イギリスで偶然迷い込んだAbvery(エイブベリー)という村で出会った一人の男をきっかけに“空間の中の見えないラインを知覚する”ダウジングという行為に惹かれ、‘98年から再びイギリスに滞在した際に、ダウジングをしながら未知だったダウジングについて知るとともに、それらを取り巻くさまざまな人や物や場所、歴史に出会う試みとして行われたプロジェクトです。
このプロジェクトで中野はいくつものダウジングによる小旅行をし、N-MARKではその間に撮られた写真やビデオ、オブジェ、ポスターの作品とダウジングに関する参考資料などを展示し、このプロジェクトが全体的に捉えられる展覧会を行います。
期間中11月13日の土曜には、アーティストトークの後N-MARKでのダウジングイベントを兼ねたオープニングパーティー「ダウジングパーティー」が行われます。
installation view
四年前、1995年春、イギリス各地を訪ねていた私は本当に偶然Aveberyという村に立ち寄った 。そこはストーンヘンジから数十マイル、シルベリーヒルに数マイルの距離に位置し、村全体が巨大な石のサークルの中にあるという特殊な村だった。その頃の私はスコットランドに住んでいたため石のモニュメントやケルト文様などに接する機会は多かったが、全体がすっぽりストーンサークルの中にある村が存在し、自分がそのなかに迷い込むことになるとは全く予期せぬ事だった。しかも今回の作品はその村の土産物屋の主人と出会うことによってはじまった。
彼は薄暗いその店の一番奥にすわっていて、そのあたりではあまりみかけないだろう日本人の私が店の中にはいってきたことに軽い注意をはらっていた。私は一通り店の中の者を物色し、最後にかたい金属でできた二本の棒を手にした。それは40センチくらいの金属の棒を6:4の割合くらいで90度に折り曲げたもので何に使うものか皆目見当がつかないのでその店の主人に聞いてみた。すると主人は返事をするかわりに私を店の入り口に招き、その金属の棒を平行になるようにもたせ、ゆっくりと店の中を横断するように指示した。
店のなかのポストカードや棚に陳列された陶器のようなものを落とさないように気をつけながらゆっくり前に進むと店の中央あたりで突然平行に持っていた金属の棒が左右に開き一直線に並んだ。なにが起こっているのかわからなかった私はそこで彼に助言を求めた。
主人の説明によると、その店はストーンサークルの村の中にあり、石と石の途中に建てられているので大きな石と石との引きつけ合う力のラインがその店の中央を通っていて私はその力を感知したというのだ。金属の棒や木の枝の先を使ってそういった力を感知する行為をダウジング と言い古代の人々の間では広く使われていた技の一種だそうだ。しかしヨーロッパでキリスト教が発達し、人々の信仰の主流になってからは古い時代の迷信として忌み嫌われ、人々はその行為を続けることをやめなければならなかった。店の主人はそのことを私に説明し終わるともとの場所に行き、無口な店番にもどった。
それ以来、私の中には金属の棒を使い空間のなかの見えないラインを知覚するダウジングという行為が植え付けられ、離れなくなった。
1998年、再びイギリスに住む機会があり、今回の滞在ではダウジングをしながら未知だったダウジングについて知るとともにそれらを取り巻くさまざまな人や物や場所、歴史に出会うことを試みた。
artist profile
biography
1967/香川県生れ
1991/東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1993/東京芸術大学美術学部美術研究科修士課程壁画専攻修了
1994/Scotland Templehill Community 滞在
1996-98/東京芸術大学非常勤助手
1998/ポーラ芸術財団の奨学金を得て渡英
solo exhibitions
1993/Innnocent / Light (銀座)
1996/STICKS (上野)
大雄院保育園におけるプロジェクト(群馬)
1998/すれちがい/海がみえる (アートサロンピンク、金沢)
groupe show
1989/“サナトリウム”(東京芸大大学展示室)
1990/“8”(筑波近代美術館)
1991/“ヤンフートの眼”(石川県鶴来町)
1993/PARKS OF THE ARTH( 取手資料館)
1994/桐生再演 3(群馬県桐生市)
1995 / 鶴来アートストリート (石川県鶴来町)
1997/パートタイム,アーティスト(新宿高島屋)
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